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教えて!まつおか先生


夏休みの課題で松岡先生に質問がありました

まつおか内科循環器クリニックの近隣に住む小学生から夏休みの課題として一通のお手紙が届きました。

お医者さんという職業に関する質問でしたが、病院として地域の皆さまに伝えたい内容でもありますので、是非ご一読ください。

能力というより、医師としての自覚がとても大切です。医師は人の命をあずかる仕事であり、とても大きな責任を背負っています。それを仕事に選んだ以上、自分のことより多くの患者さんを優先する場面がたくさん出てきます。休日に自分の予定が入っていても、自分の患者さんの体調が悪くなったり仲間から依頼があったりすれば、自分の予定をキャンセルして病院に向かいます。これが医を業とする人です。
医師になるには、医師国家試験に合格しなければなりません。大学医学部は6年制であり、卒業試験を終えたのちに医師国家試験があります。これに合格し、研修医として2年間病院に勤務して研修単位を修得すれば一人前の医師として働くことができます。
ただ、医師になると学ぶことをやめることはできません。医学は常に進化を続けていくので、以前勉強したことは数年後には通用しなくなっています。また体力がないと、重症患者に対応できません。救急患者が殺到した際には、勤務終了後も引き継ぐことができず勤務延長することが通常です。医師であれば自分で最後まで責任をもって対応したいと考えるものです。これがプロの意識というものです。
このように、医師として成長するには、学ぶ意欲と体力がないとついていけなくなります。
当直がありますが、一般的な当直とは異なります。病院の当直は、実際には夜間も救急受診患者さんや救急車受け入れなど途切れないことが多く、数時間休憩できるかどうかもわかりません。また、当直前は休みではなく朝から夕方にかけて通常勤務し、夕方になるとそのまま当直という名の夜勤に入ります。その当直は翌朝に終了しますが、同時に朝からの勤務に突入します。建前上はお昼に終了し帰宅できるとなっていますが、そのまま夕方まで勤務する医師も多く、ときにその勤務は夜まで続くことも少なくありません。
ただ、この体制も「働き方改革」が進められていますので、あと数年で勤務体制も変わってくると思います。

病院によりますが、公立病院の場合は平日の8時30分から17時15分までが勤務です。しかし実際には、患者さんへの対応ですので、時間通りに進まないことはたくさんあります。状態の悪い患者さんや多くの患者さんに対応していると、決まった時間に食事ができないこともあります。
仕事の内容は専門科によって異なります。内科系は手術室で手術することはありませんが、血管内手術や検査が多く入っています。外科系は手術を中心とした仕事です。救急科は救急車など救急患者さんへの対応です。検査や手術がない日は外来患者さんを診ています。他、院内や看護学校への講義を行ったりします。救急科の場合は、県庁や保健所で災害やコロナの対応をしたり、消防学校に講義に行ったり、病院の外での仕事も多くあります。

医業は人の命に係わる仕事でありとても大きな責任が伴い、自分の能力次第で患者さんが助かるかが決まることもあります。これはとても怖いことですが、何にも替えがたい達成感があります。
困っている人を見たら手を差し伸べてあげたくなるのが人情ですが、病気やケガで苦しんでいる人に手を差し伸べるのが医療であり、医師は医療の最終責任者です。人の命にかかわれる、これほどやりがいのある仕事は他にないと思ったからです。
また、人を相手にする仕事であるので、相手の反応は様々であり同じような対応では通用しないこともあります。「病を治すのではなく、人を診る」ことはとても奥深く、興味がつきません。

前問で記載しましたが、病を治せる医師はたくさんいます。一方、患者さんは自分の病気を治して欲しいのではなく、自分を診て欲しいわけです。足の骨を折った患者さんは、足の骨が治ればよいのではなく、痛みを理解し将来動けなくなるかもしれないという不安を取り除いて欲しいと思っています。
ここには、患者さんを自分の家族と思って接する思いやりが大切になってきます。親身に話を聞けば、患者さんが何に不安を抱いているかが見えてきます。そこに踏み込んで治療することが大切です。これが「病を治すのではなく、人を診る」理由です。
今、コロナ患者が非常に多く出ており、発熱したときにどこにいっても診てもらえない「受診難民」がたくさん出ています。医師全員が発熱者を精一杯診ていればこのようなことは起きません。たくさんの医師が発熱者は診たくないと断るため、一部の病院や医院に殺到し行列ができてしまっています。
やりたいことをやるのも大切ですが、求められることに応える医師であることを忘れないようにしています。

この「大変」とは何を指しますか?私は辛いと思ったことはありません。
研修医の頃は、深夜勤(0時から8時まで)の看護師さんに「おやすみ」「おはよう」と挨拶する生活で、年間平均睡眠時間は4時間でした。その頃は病院住み込みでしたが、梅雨明け50日間病院から一歩も出たことがなく、知らない間に夏が終わっていました。
島田に来てからは、状態の悪い患者さんをたくさん受け持っていたときには、一カ月の残業(通常勤務以外の仕事)が300時間を超えていたこともあり、これは土日なく毎日平均18時間の勤務が一カ月以上続いたことになります。連続20日間、朝3時に呼び出されたこともありました。最近でも救急患者さんが続いたりすると、40時間一睡もせず食事すらとれずに働き続けることも少なくありません。
朝4時に病院から呼ばれた時や、元日夜に呼ばれた時に、私の親は「こんな時間から行くの止めておきなさい」「正月くらい行くの止めたら」と言いました。親の発言は常識的なものだと思いますし、エッセンシャルワーカー以外の方には理解できない勤務体制かもしれません。しかしこれが医業を選んだ者の宿命ですし、自分が必要とされるなら応えるべきでしょう。ここに大変という思いはありません。
また、重症患者の対応に難渋することはあります。トラブルも発生したりします。これは確かに「大変」と感じるシーンですが「深い」対応が求められるものであり、医療者以外の方の言う大変とは意味合いが異なると思います。

病気が治ったり元気になったりして「ありがとう」と言われることは、なによりうれしいお礼の言葉です。一方、全員が治るわけではなく助からない人もおられ、その方から「あなたに診てもらえてよかった」と言われることは、本当に医師冥利につきます。
患者さんの笑顔があるから、この仕事を続けられるのだと思います。そのためには、やりたい医療ではなく、求められる医療を行うことが重要なのでしょう。医療というのは、病気を治すことではなく患者さんを診ることなのです。
他では満足のいく治療が受けられなかった患者さんが来られた際に、眼を見て訴えを聞き、診察の結果医学的根拠をもって診断し丁寧に説明すると、それだけでとても喜んで帰られたりします。親身になるのは勿論、相当の知識と技術を持ち合わせて初めて、患者さんに満足してもらえる医療を提供できるのだと思います。